法律相談あれこれ
弁護士 吉川法生がお答えします
      離婚の際の婚姻費用と養育費について

Q:夫の浮気が発覚し、半年前に高校1年の娘(16歳)と中学1年の息子
(13歳)を連れて実家に戻り、夫とは別居しています。お互いに離婚する
ことについては合意しているのですが、子どもの養育費について意見が一致
せず、話し合いは平行線のままです。
私たち3人の生活費は、私のパートの給料と実家の両親からの援助でまかな
っていますが、来年から両親も年金暮らしとなり、いつまでも両親に頼って
もいられません。夫から養育費を支払ってもらうためには、どうすればいい
のでしょうか?
なお、私は、別居する前は専業主婦でしたが、現在はパートで働き月額8万
円くらいの収入があり、年収にすれば約100万円程度です。また、夫は会
社員で、年収は約600万円です。

A:離婚する場合、特に専業主婦の女性が離婚する場合は、経済的な問
題をどうするかは、大変悩ましい問題です。当事者同士で話し合い、養
育費の額がすんなり決まればいいのですが、離婚を考えている当事者同
士の話し合いだけでは、合意に至らないケースがしばしば見受けられま
す。
「養育費」とは、親としての扶養義務に基づいて子どもたちに支払わな
くてはならない費用のことです。離婚が成立した場合、配偶者に対して
の扶養義務はなくなりますが、親として子どもに対する扶養義務はなく
なりません。
今回の相談者の方のように、当事者同士で話し合いがまとまらない場合
は、家庭裁判所で「調停」を申し立てることができます。
調停とは、離婚の条件などについて、当事者間で話し合いがつかない場
合、家庭裁判所で、調停委員(通常男女1名がペアとなっています)が
間に入って、双方の言い分を聞き、妥協点を探りながら、話し合いをま
とめる制度です。お互いが譲り合って、養育費の額が決まったら、調停
が成立します。
養育費の支払いについては、いきなり「月額○○円支払え。」と裁判を
起こすのではなく、まずは調停で話し合いをするのが一般的です。話し
合いがつかない場合は、審判という手続きで、裁判官が決定することに
なります。
家庭裁判所には、調停申立書の書式が用意されており、書式に沿って主
張を記載するだけで簡単に調停申立書が作成することができます。もち
ろん、調停段階から弁護士に依頼することもできます。
調停の席で、当事者間で養育費の額に争いがある場合は、当事者双方の
収入や子どもの年齢・人数に応じて、養育費の算定表が参考にされます
。裁判官が審判で養育費を決める場合も、特別な事情がない限り、算定
表に従った形で決められます。
この表は、インターネットで検索すれば、簡単に閲覧できます。このと
きの年収は、本件の夫のような給与所得者の場合、手取りではなく源泉
徴収表の「支払総額」が基準です。相談者の方の場合は、養育費として
月額8万円から10万円が相当額とされています。
なお、この相談者の方は、実家のご両親から援助をしていただいている
そうですが、援助は、実家の好意に基づく贈与だと考えられております
ので、ご実家からの援助は基本的には収入に加算されません。従って、
相談者は、夫を相手方として養育費について調停を申し立てるのがよい
でしょう。
もっとも、女性が離婚を考えるときは、あまり夫からの養育費を当てに
しすぎるのも禁物です。調停が成立しても相手の経済的な状況が急変す
るなどの事情で、養育費の支払が滞ったりすることもよくあります。も
ちろん家庭裁判所に履行勧告をしてもらうなどの方策はありますが、相
手方に収入や資産がない場合はどうすることもできなくなります。
各自治体には、収入に応じて、児童扶養手当などの母子家庭を救済する
制度がさまざま用意されていますので、養育費の調停と同時にどんな制
度が利用できるかも調べておくとよいでしょう。



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