法律相談あれこれ
弁護士 作前千春がお答えします
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             未成年者の契約

Q.私の息子は現在19歳ですが、先日、息子が勝手に30万円でバイクを購入していたことを知りました。未成年の子供にそんな高額なものを売りつけるのはおかしいと思って息子に詳しい事情を聞いてみたところ、息子は、「未成年だということは隠していた」と言いました。契約を結んでしまった以上は、代金を支払わなければならないのでしょうか。

A.未成年者が契約をする際には、原則として法定代理人(親権者など)の同意が必要とされています。そして、未成年者が法定代理人の同意なく締結した契約は、原則として取り消すことが出来ます(民法5条)。
契約を取り消せば、その契約ははじめから無効であったものとみなされます(民法121条本文)。したがって、この取消しができれば、あなたはバイクの代金を支払う必要はなくなりますし、息子さんは購入したバイクを返さなければならないことになります。ただし、未成年者の場合は、法律上、現に利益を受けている限度において返還の義務を負うとされていますので(同条但書)、息子さんがバイクを使用していたとしても、そのバイクをそのまま返せばよいということになります。
しかし、例外として、以下の場合は取消しが出来ないことになっています。
@単に権利を得、または義務を免れる行為(民法5条1項但書)
A法定代理人が目的を定めて処分を許した財産を、未成年者がその目的の範
  囲内において処分した場合(同条3項前段)
B法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産について未成年者が処分
  した場合(同項後段)
C未成年者が営業を許されており、その営業に関して法律行為を行った場合
  (民法6条1項)
D未成年者が成年であることを信じさせるために詐術を用いた場合(民法21
  条)
本件においては、たとえば、Bの「目的を定めないで処分を許した財産」とは、小遣いなどがこれに当たりますので、息子さんがお小遣いをためてバイクを購入したような場合は、取消しが出来ないということになります。また、息子さんがあなたの許可を得て営業をしており、その営業のためにバイクを購入したというような場合は、Cに当たりますので、やはり取消しは出来ないということになります。
また、あなたの息子さんは「未成年であることを隠していた」と言っています。これがDの「詐術を用いた場合」にあたるかが問題となります。
この「詐術を用いた場合」というのは、単に黙秘していただけの場合はこれに当たらないが、他の言動とともに相手方の誤信を強めた場合はこれに当たるとされています。そうすると、息子さんが、積極的に自分が20歳以上であると言った場合でなくても、自分が成人であるふうに装ったり、成人であると誤解させるようなことを言ったりした場合には、取消しができないということになるでしょう。
また、このほかにも、息子さんが契約時点ですでに結婚している場合は、成年とみなされることになります(民法753条)ので、契約の取消しはできません。なお、結婚はしたけれど離婚した、という場合でも、成年とみなされることにかわりがありませんので、やはり契約の取消しはできないということになります。

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