寄 与 分

Q:先日父が亡くなりました。父は、5年ほど前から寝たきりとなり、母は
既に亡くなっていたため一人暮らしでしたので、長男の私が自宅に引き取っ
て介護をしてきました。
父の遺産は、3000万円の預金だけ、遺言書はありません。相続人は、弟
と妹と私の3人です。
弟と妹は、遺産分割は平等に1000万円ずつだ、というのですが、私が父
を介護してきたことは何にも考慮されないのでしょうか・・・?

A:65歳以上の方が人口の21%を占める超高齢社会となった日本で
は、今回の相談者のように、ご両親が高齢になり、認知症や寝たきりな
ど介護が必要になった場合、同居して家族で介護されている方もいらっ
しゃるのではないでしょうか。
相談者のお父さんは、遺言などはなかったので、遺産は、原則として法
定相続分の3分の1ずつ分けることになります。
法定相続分は、同居や介護の有無に関係なく定められていますので、弟
さんと妹さんの言うとおりに1000万円ずつ分けるようにも思われま
す。
しかし、長年お父さんを引き取って介護をしてきた長男である相談者に
とっては、あまりにも不公平なお話ですね。
そこで、民法には、遺産の維持や増加に貢献した一部の相続人に対し、
その貢献を評価して、貢献に相当する額の財産を得ることを認めて、相
続人同士の公平を図ろうとする制度があります。これを「寄与分」とい
います。
どのような場合に寄与分が認められるかというと、遺産の維持や増加に
特別な寄与行為をしたことが必要です。
例えば、今回の相談者の方が、健康なお父さんと同居して面倒を見てき
たとしても、直系血族としての扶養義務の範囲であれば、特別な寄与行
為とはいえません、しかし、今回の相談者のように、当初別居していた
ところ、お父さんが寝たきりで介護が必要になったので、自宅に引き取
って介護をしていたような場合は、一般的な扶養義務の範囲を超えた特
別な寄与行為があったとして、寄与分が認められるべきでしょう。
では、どのようにして、寄与分を請求し、遺産分割を進めるのでしょう
か。
基本的には、寄与分は、相続人全員の協議によって決めます。したがっ
て、相談者の方は、弟さんと妹さんの3人で、話し合いをして、寄与分
を決めるべきです。
しかし、残念ながら、今回の相談者の弟さんと妹さんは、平等に100
0万円ずつだと主張しているようですので、協議しても意見が分かれて
しまうことが予測されます。
このような場合は、相談者の方は、家庭裁判所で調停を申し立てて、裁
判所で調停委員の方に間に入ってもらって協議をします。
調停でも決まりそうにない場合は、これまでの寄与分についての資料な
どを提出して裁判で裁判所に具体的な寄与分を決めてもらいましょう。



法律相談あれこれ
弁護士 吉川法生がお答えします
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